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幸せの頂点
第17章 場所

「し…の?」
キッチンの方から間抜けた声がする。
そちらに振り返ればTシャツにジーンズというラフな姿で缶ビールを相手に栓抜きを握るというみっともない姿をした彼が驚いた表情で私を見てる。
「プル…、開けに来ました。」
文句を言ってやろうと思ってた。
部長のせいで私の幸せは崩れたのだと…。
だけど彼の顔を見たら、そんな文句が出て来ない。
缶ビールを受け取ろうと彼に向かって手を伸ばす。
その手を部長が強引に握り私を強く引き寄せて抱き締める。
「おかえり…。」
低く呟く声に涙が出た。
私はまだ部長の紫乃だ。
「た、だいま…。」
ブスでも仕方がないと泣く私に
「だから、なんで泣くんだよ…。」
と呆れた声がする。
「神威が…。」
悪いっ!
部長が全部悪いと私の中で決め付ける。
やり甲斐のある仕事も素敵な彼氏も夢に見た幸せな結婚も全て部長が打ち壊してくれた。
「神威なんか大っ嫌いっ!」
憎い男にそう叫ぶ。
「今は嫌いで構わん。いずれは俺無しでは居られなくしてやるから…。」
自信過剰な俺様はニヤけた笑いを浮かべて私の頭にキスを落とす。
「自信過剰…。」
「自信のない頼りない男なんぞ迷惑だろ?」
「俺様…。」
「紫乃には優しくしてやってる。」
「私だけにじゃなく梨花さんにもかなりの過保護らしいね…。」
「なっ!?」
梨花さんの話になった途端に部長がアタフタとして狼狽え出す。
「そんなに梨花さんには甘いの?」
「そういうつもりはねえんだけど…。」
鼻の頭をポリポリと指先で掻いて部長が微妙な表情をする。
梨花さんは部長のお義父様の妹の娘だ。
つまり部長の従妹になる。

