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幸せの頂点
第17章 場所

幼い頃にお義母様を失くした部長の家族は梨花さんの家族と暮らしてた。
「家族の中で梨花が一番、小さかったから俺が雑に扱うと姉貴が鬼みたいに怒るんだよ。」
兄妹のように育って来た関係だと部長が言う。
今も梨花さんに逆らうとお姉さんに怒られると条件反射的に逆らわない癖がついたらしい。
それに梨花さんはあまり身体も丈夫な方じゃない。
「就職は佐丸でしろって言ったのに何故か俺について来ちまったからな。」
体力のない梨花さんには無理な出張を何度もさせられないからと商品の情報を部長が掻き集めるやり方が定着してしまった。
「高崎の子供を妊娠した時も梨花にはもう仕事は無理だと言ったんだ。けど梨花は妊娠の事すら高崎に隠して働いてた。結果は紫乃が聞いた通りだ。」
私が開けた缶ビールを飲みながらリビングのソファーに座る部長が自分を責める言い方をする。
その隣に座れば部長が私の肩を引き寄せる。
「でも、それは神威のせいじゃないよ。」
「半分は俺のせいだ。梨花に厳しく言えなくて梨花の好きにさせた結果があれだからな。」
部長が梨花さんを怒鳴りつけてたと里緒ちゃんが言ってた。
ならば部長は部長なりに叱ったつもりのはず。
その叱り方が甘かったと部長は今も後悔をする。
だから、この先も部長は梨花さんに甘い顔をして私や高崎さんをヤキモキさせると思う。
「それよりも紫乃はなんで怒ってたんだ?」
肩に回された手が私の首筋をくすぐるようにして撫でて来る。
「勝手に寄って来る女だって言われたから…。」
首筋で悪戯をする手の甲を抓ってお痛をやめさせる。
「痛いし…、つか…、勝手に寄って来た女って一体、何の話だ?」
いつものようにとぼけてるのかと思ったけど、部長には本気で心当たりがないらしい。

