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幸せの頂点
第17章 場所

「部長が百貨店を辞める前に梨花さんと、そんな話をしてたでしょ?」
あの時の状況を説明する。
「ああ、涼香の事か…。」
部長の顔が険しい顔に変化する。
「涼香って、社長のお嬢様の?」
「そう、その涼香が地下食品売り場のフロアマネージャーを希望した。しかも、社長がうちの親父に涼香との見合い話まで持ち込んだんだ。」
「やっぱりお見合いはしたんだ。」
佐丸の跡取り…。
そういう話が幾つもあるのだろうと思う。
それでも、私にとってはそういう話は気分の悪い話だと口を尖らせた。
「見合いなんかしてねえよ。あの日は紫乃と富士五湖の温泉に行ってたろ。」
部長が私の頭をグリグリと押さえ付ける。
「あの日はって!?」
「すっぽかしたに決まってる。涼香みたいなガキの女に興味ねえもん。」
「けど…。」
出張中はなんとなく部長が冷たいと感じた。
「紫乃が彼氏の事で苛立ってるのを見るのは俺からしたらムカつくだけからな。」
「ちゃんと彼氏とは別れたわよ。」
「なら、なんですぐにここに来ねえんだよ。」
「神威が冷たいからだよ。梨花さんにはやたらと優しいくせに…。」
「梨花は高崎の女だ。」
「私は?」
まだ部長の紫乃なのか?
その不安が拭えない。
部長は克のような我慢や努力をしてくれない。
欲しいと思えば手に入れるけど、要らないと判断すれば簡単に突き放す。
部長を忘れようとしてた女なんかもう要らないと部長が判断してたらと思うと胸が痛くなり、苦しくて息をする事すら難しい。
「紫乃の為に待っててやるって何回言った?」
拗ねた声がする。
部長が私からそっぽを向く。
私が部長を信じてなかった事に怒ってる。

