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幸せの頂点
第18章 就職



せっかくの休暇だし…。

部長にちょっとは甘えたりしたいという気持ちはあるけれども、ここで許せば話し合いがなし崩し的に消える恐れがある以上は厳しい態度で接する。


「紫乃が冷たい。」

「なんで藤原が来ないって言い切れるの?」

「代わりが来るからな。」

「代わり?」

「『Beau』の代表が来るんだ。」

「『Beau』?」


『Beau』とは、あの『Beau』の事だろうかと考える。

世界的エステサロン『Beau』。

その代表が何故、藤原の代わりなのか?

意味がわからないという顔をする私の頬を部長がゆっくりと指先で撫でて来る。


「紫乃は少し勉強不足だな。」


穏やかな顔。

別に私を馬鹿にしてる口調ではない。

それでも少し苛立ってしまう。


「あの『Beau』が何故、藤原と関係があるの?」


『Beau』のコスメが世界シェアNo.1である事実は間違いない。

佐丸の化粧品売り場だけでなく、うちの百貨店の化粧品売り場でも『Beau』の売り場は一番手に存在しており、売り上げは断トツの1位を獲得する。


「その『Beau』の今の代表が藤原の代表の甥だからな。関東で藤原が招待された場合のほとんどを甥である『Beau』の代表が顔を出す。」


部長の説明に目を見開く。


「『Beau』が藤原の親戚?」

「正しくは『Beau』も藤原一族の経営会社だって事だ。」

「一族経営…。」


いわゆる財閥扱いの企業だと初めて知った。


「部長は詳しいんですね。」

「俺の母と前の『Beau』の代表だった女性は同級生だったらしい。今の『Beau』の代表はその息子で、その女性は藤原の代表の姉ってくらいしか俺も良くは知らねえよ。」


部長は苦笑いをするけど、それだけ知ってれば充分だと思う。


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