この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
幸せの頂点
第18章 就職
一流であってこその佐丸…。
供給の保証が出来ない幻の商品などには一切の興味を示さない。
「だけど…、いつかは生産者が幻を安定商品として出荷出来る日が来るかもしれません。」
その時はうちの百貨店が佐丸を出し抜く事になる。
それは間違いなく部長の実績であるはずだと私は信じたい。
部長はそんな私の頭をクシャクシャと撫でる。
「逆に安定せずに消えてしまうかもしれない不安定な商品だ。地方百貨店だから扱えるが佐丸でそんな事をすれば大問題に発展する。」
重く厳しい言葉だった。
部長が言う事が正しい。
今はうちの百貨店でも数量限定で売り出してはいるが安定出荷が望めない場合は、いずれ他の商品と差し替える必要が出て来る。
中途半端に商品が入荷出来なくなる状況に陥れば、それは百貨店の信用問題にも影響する。
だから始めから、うちの百貨店では幻のトマトとして表示した上で売りに出してる。
幻である限り商品棚から姿を消しても信用問題にまでは発展しない。
一流でないという気楽差がそういう手段を選べるだけの事だと部長が哀しげ笑う。
いつものように俺様で豪快で自信に溢れた部長が好きなのに…。
佐丸に対すると自信を失くす部長に胸が痛くなる。
「いつか、勝てばいいだけよ。」
自分自身に言い聞かせるように部長に言う。
今は勝てなくとも、いつかきっとチャンスが来る。
いつまでもうじうじとして不幸な気分で居るのは私の性分が収まらない。
「やっぱり紫乃は怖い女だ。」
部長がニヤリと笑って私の頭にキスを落とす。
「食事の続きにしよう。せっかくのお料理が冷めちゃったよ。」
「ビールも温くなったな。」
リビングに戻り部長と夕食の続きをする。