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幸せの頂点
第19章 親子
「叔父様は神威に涼香さんとのお見合いを申し込まれたから、それを承諾したのよ。条件はその百貨店が佐丸の子会社になるって事だったの。」
身内の話を一番よく知る梨花さんが私にわかるようにと説明する。
「うちの百貨店が佐丸の子会社に!?」
「そうよ。元々、経営が悪化してる百貨店だもの。地方なのに狭いエリアで無理に何店舗も支店を出したりしてるからよ。」
それは事実だと思う。
うちの百貨店は本店を中心に僅か3駅ほどのエリアで支店を3店舗も設置してる。
その為に同じ百貨店内での売り上げ競争が激しかった事実は否めない。
「涼香さんとの話とか、経営統合の話とか、そういう話が本格化する前に佐丸に帰って来るべきって私は神威に言ったのに…。」
梨花さんが唇を噛んで俯いた。
私が欲しいと部長は自分の考えを譲らなかった。
中途半端に百貨店に残った部長に対して社長は当然の事だと涼香さんとのお見合い話を進めていく。
私を待つ部長はその状況でもずっと耐えて来た。
あの人がそこまでして私を待つ理由がわからない。
「『親父と違って俺に言われる物を買い付けに行くバイヤーなんか欲しくないんだよ。俺は俺と同じように特別な物を欲しいと思う気持ちを持ち自分の勘を信じて俺と一緒に商品の買い付けに走れるバイヤーが欲しいんだ。』佐伯さんはずっとそう言って阿久津さんが来るのを待ってた。」
梨花さんとは違い高崎さんは穏やかな表情をして私を見る。
金子さんも初めての時は部長の命令で都内の輸入会社の全てを走り回ったと言ってた。
部長はそういう人だけを求めて自分の手元に置く。
「だから阿久津さんだけは絶対に欲しいと佐伯さんは譲らないまま百貨店に残ってた。結局、社長が根負けした形で阿久津さんが本店に呼ばれたんだ。」
高崎さんの話でなんとなく理解をした。
たった1度だけでも私が部長の手配した商品よりも売り上げを上回る事が出来たバイヤーだったから部長は私を欲しがった。