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幸せの頂点
第19章 親子
それからの一週間は何もなく平穏な日々だった。
佐丸の創立祭の為に私と高崎さんが一緒に休暇を取るという状況に金子さんが口を尖らせる。
「佐丸の創立祭?俺も行きてー。」
バイヤーなら当たり前の言葉を口にする。
「金子の場合、知られ過ぎてるからわざわざ行く必要がないだろ?」
高崎さんが呆れた声を出す。
「まあ、そうだよな。都内の商社はほとんど知ってる奴ばかりだから佐丸で会っても今更になるな。」
そう納得する金子さんを少し尊敬する。
それだけの広い顔を持つレベルのバイヤーは極限られた人だけだ。
「お疲れ様でした。」
金子さんのように自信を持てる確かなものがない私は不安なまま百貨店を出る。
部長に選ばれたはずなのに…。
部長が居なければ何も出来てない自分に焦る。
百貨店から真っ直ぐに部長のマンションに向かう。
「私は梨花さんの代わり?」
如何にもマンション内のプールから帰って来たばかりですというニートな男に苛立ちを感じるから自分の気持ちをぶつけてた。
「いきなり何の話だ?」
とぼけたような答えが帰って来る。
「梨花さんに会った。私は神威に相応しくないって言われたわ。私は辞めた梨花さんの代わりに呼ばれただけのバイヤーだと…。」
私の我儘は百貨店にとっても佐丸にとっても迷惑だと突きつけられた事実を説明する。
「高崎が言った通り、それは梨花の勘違いだな。」
部長が呆れた声を出す。
「だけど…。」
「姉貴は紫乃を気に入ってた。だから紫乃に嫌な態度はしなかったはずだ。」
部長が私の頭を撫でて来る。
確かに部長のお姉さんは私に対して嫌な表情は全くしなかった。