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幸せの頂点
第19章 親子
それだとダメなのか?
別に私は母の味で構わないと思う。
だけど部長は男だから…。
彼は野獣で戦士。
常に戦う事で上を目指す人。
だから自分をお義父様の存在に継ぐ立場に甘んじる事を許さない。
お義父様を超えた存在になれなければ佐丸には戻りたくないのだと感じる。
そしてお義父様を超えるにはお義父様の言う事だけを聞くロボットではなく部長を支えて共に動く仲間を部長は求めてる。
その支えが私…。
ようやく何かが見えて来た。
「そろそろ時間よ。」
プールサイドから彼に手を差し伸べれば私の手を握りプールから上がって来る。
「顔…、出すだけだからな。」
往生際が悪くふてくされた顔で私を見る。
「私の為に我慢して…。」
部長の頬に手を当てて少し背伸びをする。
部長が私の腰に腕を回して私の唇に唇を重ねて来る。
長いキス…。
頭が熱くなる。
真っ白な世界が広がる。
私と彼だけの世界…。
そこから出たら私の小さな幸せは消えてしまう。
そんな風に感じさせるキスが終わると彼が私の顔を愛おしげに撫でて来る。
「行くぞ。」
低くそう呟いた彼が私に背を向ける。
私はその広い背中を追い掛ける。
私は彼が必要とする存在なのだ。
そう思う事で自分を何度も奮い立たせた。
ちょっと洒落たドレススーツ…。
この日の為に部長が用意してくれた。
髪をまとめ、いつもよりも念入りにメイクする。
佐丸の創立祭…。
大臣クラスの政治家までもが招待されている。
バイヤーという営業マンが余り華美な姿をする訳にはいかないが、それなりのお洒落は必要だ。
久しぶりにスーツを着た部長を見ると私の気持ちが浮かれて来る。