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幸せの頂点
第20章 対立
戸惑う私を見た老人がふふふと笑う。
「そっちの渡り廊下から庭に繋がる石段かある。」
老人が指差す先にはもう少し小さな渡り廊下があり庭と繋がる石段が見える。
「そっちに行きます。」
そう言ってもう一つの渡り廊下に向かった。
迷路の様なお屋敷なのに老人は内部の造りを隅々まで理解してるように思える。
藤原の関係者?
まさか藤原の代表!?
京都に居る代表は来ないと部長は言ってた。
甥は部長と似たような年齢のはず…。
ならば、やはり京都の代表がお忍びで来てる?
渡り廊下から渡り廊下へと移動すれば老人が私を手招きする。
「向こうに人が来ない離れがある。そこが一番涼しく静かだから移動しよう。」
冷たい飲み物を飲んで少し回復した老人が渡り廊下を歩き出す。
歩き方を見る限りは老人というよりも中年のように若々しいとも思う。
ただ顔にはかなり深く刻まれた皺がある。
それがその中年男を老けさせて見せている。
それに彼はとても疲れてるようにも見える。
ほんの少し渡り廊下を移動しただけではぁっと老人がため息を吐く。
「すっかり運動不足だな。若い頃のようには動けないと感じる瞬間が一番嫌な時だ。」
呟くようにボヤく老人の言葉に
「そんな事はありませんよ。」
と気休めの言葉を投げかける。
私の慰めに老人がまた、ふふふと笑う。
「おかしいですか?」
馬鹿にされた気がする。
「いや、羨ましいんだ。その若さがね。」
老人は懐かしい物を見るように目を細めて私をじっと見つめて来る。
その変な視線にドキドキする。
疚しい感情でなく惨めで逃げ出そうとしてた自分を見透かされてる気持ちにさせられる視線に妙な焦りを感じてしまう。