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幸せの頂点
第20章 対立
曽我社長と呼ばれた男性が頭を掻いて照れた様な表情を浮かべる。
「昔のように昌で結構ですよ。それに会長が見当たらない時はこの東屋に居るはずだと前もって叔父から聞いております。」
男性の言葉に今度は老人が困った様な表情をする。
「清太郎さんか…。彼は何でもお見通しだな。」
曽我社長と老人の会話を聞いて私の中で段々と嫌な予感が大きくなる。
「会場に戻らなくて良いのですか?」
「老いぼれが居なくとも藤原の協力があれば創立祭は恙無く行われる。」
「会長らしいお考えです。」
会長…。
それは佐丸の会長を意味する。
つまり老人は部長のお義父様であり曽我社長は『Beau』の社長で藤原の甥にあたる人だ。
つまり今の私は最も危険な人物達と同じ空間に存在する状況であり、あまり顔を見られないようにするのが得策だとか考える。
神威の馬鹿…。
早く戻るという約束だったのに…。
そんな約束がなかったかのように私は雲の上の神々の世界で迷子な気分にさせられる。
この恐ろしい場所からそっと逃げ出そうと試みる。
「何処に行く?」
とぼけた老人が私に言う。
この狸親父…。
カバオ君に向けられない私の怒りはその父親にも向けられる。
「こちらの要件なら直ぐに済みますから…。」
屈託のない笑顔の曽我社長にまでそう言われると逃げ出す事は不可能に思える。
「私に用事が?」
会長が曽我社長に聞く。
「つまらない招待状です。」
着物の袂から曽我社長が白い封筒を取り出すと会長に向かって差し出した。
「ご結婚…、するんだね。」
「はい、こちらの梓(あずさ)と…。」
曽我社長の後ろで慎ましやかに控えてた女性を曽我社長が会長に紹介する。