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幸せの頂点
第20章 対立
妬ましいとまで思えるほどの彼らの幸せの頂点が私には見える。
結婚を控え2人で寄り添う姿が実に微笑ましく美しいとまで感じる。
「おめでとう…。」
「母の結婚式にもご出席された会長には招待状を手渡ししようと押し掛けさせて頂きました。」
「お気遣いをありがとう。昌君のようにうちの愚息も落ち着いてくれれば助かるのだが…。」
口ではそう言いながら私をチラ見する会長の視線がやたらと痛いと悟る。
「神威さんならきっと大丈夫ですよ。彼が本気で幸せにしたいと思える女性と出会えば彼は全力を尽くす人ですから。」
曽我社長も会長の視線に気付き私を見ながらフォローの言葉を投げかける。
「あれはダメだ。子供のように欲しいものを欲しいと駄々を捏ねて手に入れるだけの男だ。」
会長がため息を吐く。
欲しいものを欲しいから手に入れる。
それがいけない事なのだろうか?
私には会長の真意がわからない。
「それではそろそろ失礼致します。」
曽我社長が頭を下げる。
「結婚式には是非参加させて貰う。」
「ありがとうございます。」
最後まで笑顔のままで挨拶を済ませると曽我社長は婚約者を連れて立ち去った。
後に残された私は気不味い顔しか出来ない。
「阿久津 紫乃さんだね。」
意地悪に会長が笑う。
「知ってて私を連れて来たのですね。」
それは私と部長を引き離す為の演技であり私はまんまと会長の策略に羽目られた。
私は佐丸に相応しくないと会長自ら引導を渡すつもりなのかと身構えて会長と向かい合う。
「そう無闇に人に敵意を向けるものじゃないよ。」
会長はとぼけたように私に言う。