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幸せの頂点
第20章 対立
そんな私を愚かだという一言で一掃してしまえる世界感の違う人と私は孤独に戦う。
「愚かではいけませんか?」
泣きそうになる。
愚かかもしれない。
それでも私は彼が欲しいのだと会長に訴える。
会長は必死な私を穏やかな顔で見る。
「一バイヤーという立場だけならそれでも構わないだろうな。だがやがて神威は1万人の社員の責任を持つ立場になる。その時になって今のように愚かでは困ると言ってるだけだ。」
「部長は愚かではありません。」
「愚かだよ…。」
私に対する言葉は穏やかだけど部長に対する言葉は決定的で厳しい。
「あれには君が務める百貨店のご令嬢と見合いをさせる予定だった。なのにあの愚息は欲しい女が居るからと逃げ出した。」
会長がため息を吐く。
「逃げたって…。」
「言葉通り逃げたのだ。別に無理矢理に結婚をさせようとかいうつもりはない。嫌ならば席に出て堂々と断る理由を言えば良い。」
「断れる状況だったのですか?」
「神威が断れば他の手段に切り替えるだけだ。」
会長の瞳が野獣に変わる。
背筋がゾクリとした。
「他の…、方法とは…?」
ゆっくりと慎重に聞く。
こちらが油断をした瞬間に首元に喰らい付かれて噛み殺されそうな感覚がする。
「姉の沙来もまだ独身のままだという事だ。」
会長が吐き捨てるように言う。
ああ、そういう事かとこの人に対する嫌悪感が湧いてくる。
部長が経営戦略の駒にならないのならば娘であるお姉さんを平気で駒にすると言っている。
なぜなら会長の考え方は何かを手に入れるならば何かを失うべきだという考え方だから…。
部長が私を手に入れたいならお姉さんを犠牲にする事が必要だと会長は叩き付けたのだ。