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幸せの頂点
第20章 対立
だから部長は逃げ出した。
こんな横暴なお義父様にだけは頭を下げないと決めた理由がよくわかる。
「そんな犠牲なんか必要ないわ。」
「ならば社員1万人を犠牲にする事になる。」
「何故ですか!?」
「佐丸だって現状の経営はギリギリだ。この窮地を乗り切るならば社員を切る戦略を使うか他の百貨店を佐丸に吸収して、そちらの社員の方を切るしか今は方法がない。」
会長の言葉に愕然とする。
だから梨花さんが辞めた後のうちの百貨店には佐丸の社員が部長の部下として配置された。
誰かが何かを手に入れる度に何処に犠牲が生まれる負の連鎖をちっぽけな私には止められない。
私はただ幸せが欲しかっただけなのに…。
曽我社長夫婦が見せてくれたような幸せの頂点にいつかは自分も立ちたいと願っただけなのに…。
それが愚かだという事実を突き付けられる。
この負の連鎖をたちきるには…。
「私が部長と別れれば…。」
そう呟いた瞬間、私の頭をグッと力強く押さえ付ける人が居る。
「親父の言葉に振り回されんな。」
不機嫌な声がする。
その言葉は私の全身を優しく包み込む。
「神威…。」
涙が出た。
会長の前でブスになるのが嫌だとプライドだけでずっと堪えてたけどもう我慢が出来ない。
「こいつを手に入れるのにどんだけ苦労したと思ってんだよ。」
嘆くように部長が会長に言う。
「他の男と同棲してる女を欲しがるからだ。」
呆れたように会長が言い返す。
「ご存知だったの!?」
あまりの驚きに涙が止まる。
「神威が見合いを断って来た時に悪いが調べさせて貰ったよ。平凡な幸せの方が君には良かったと後悔する日が来るかもな。」
会長が情けをかける言葉を私に投げかける。