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幸せの頂点
第20章 対立



部長は私如きには手に負えない世界の人なんだと会長が言う。

会長の言う通りに何かを手に入れるには何かを犠牲にする必要があるのかもしれない。

それでも私は部長が欲しいと願ってしまう。


「紫乃、親父の言葉に振り回されるな。それは姉貴も同じ意見だ。佐丸の為に犠牲になるくらいなら高崎に佐丸を譲ればいいってな。」


会長を挑発するように部長がニヤリと笑う。


「親父だってわかってるんだろ?どうせ姉貴には親父は逆らえない。それは俺が梨花に逆らえないのと同じ理由だ。だからこれ以上、紫乃を傷付ける事は認めねえよ。それは姉貴も同意した。」


部長の言葉に会長が嫌な顔をする。


「沙来までもがそんな事を言ってるのか…。」


牙を剥いてた老虎がただの老人の顔へと戻る。


「佐丸の経営が厳しいなら俺も姉貴も協力はする。だが紫乃を巻き込むのだけは許さない。」

「ならば佐丸に戻れ…。それに条件がある。」

「条件?」


部長の表情から笑いは消え、牙を剥く野生の表情に変化する。

この親子って…。

本当に似た者同士なんだとため息が出た。


「そこの女性バイヤーを佐丸に連れて来い。神威を抜いた売り上げを佐丸でもやって貰う。」


会長の言葉に目を見開く。


「私もですか!?」


親子喧嘩に巻き込ないという約束はなかったかのように軽く吹っ飛んでる。


「当然だろ?ついでに神威の子も産んで貰う。そろそろ次の跡取りも必要な時期だというのに沙来は全く結婚するつもりがないからな。」


ひょうひょうとした表情の狸老人に驚きよりも怒りが湧く。


「まあ、親父が心配しなくとも跡取りはそのうちに出来る。元々、紫乃を孕ませてから親父に会わせるつもりだったからな。」


会長と同じように軽く言う部長にも怒りが湧く。


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