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幸せの頂点
第21章 本来
藤原の娘が嫁いだ先は立派な呉服店の跡取り息子。
立派な呉服店に反比例するような、その息子は毎日お酒を飲み女と遊ぶ放蕩息子。
「それが本来の佐伯の家な。」
クックッと部長がおかしげに笑う。
放蕩息子は仕事をしない。
そして藤原の嫁いだ娘が百貨店を切り盛りする。
不幸だったのは藤原の娘には放蕩息子との間に娘しか出来なかった事。
「仕事仕事で跡取りも産めない女。」
そう蔑みを受けながらも藤原の娘は放蕩息子の娘を立派に育てあげる。
しかし肝心の跡取りが居ない…。
仕方がなく婿養子を貰ったが運命は世界大戦へと流されて行く。
軍に夫を取られた女は夫の留守を守ろうと必死に百貨店を切り盛りする。
そして、その夫との子はまたしても女の子。
挙げ句に夫が戦死すれば跡を継ぐのは女の子。
「時代が時代だからな。表向きは婿養子を取り、その実は女が佐丸を引き継いだ。」
部長の話に驚きだけしか感じない。
「じゃあ、まさか…。」
「親父も当然、婿養子…。だから藤原の娘とうちのお袋の関係で親父は仕事をしてただけだ。」
それは会長の実力じゃないと部長が口を尖らせる。
「お義父様がやり手のバイヤーなのは事実でしょ?それに何故、お義父様は何かを欲しがる人間は愚かだと言うの?」
「親父にもプライドはあった。佐丸の婿養子だからでなく自分の実力で佐丸の経営を成し遂げたいと親父は家族を顧みずに働いた。」
会長が必死に働く間、跡取りとして初めて男の子である部長が産まれた。
会長はその子の為にと更に必死に働いた。
藤原との血縁だからと言われるのが嫌で藤原の出店やBeauの出店も拒んだ事もあったらしい。