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幸せの頂点
第21章 本来



「だけどお袋が癌になった。しかも藤原の娘と同じ時期に…。親父は何故かそこから人が変わった。佐丸も要らない。何も要らないからお袋の生命だけが欲しいと親父は願うように変わってた。」


跡取りに男の子が欲しいと会長は願った。

その自分の願いと引き換えに奥様を亡くしたと会長は感じた。

何かを望めば何かを失う事になる。

それが愚かだと会長は言う。


「その後も親父は藤原やBeauの出店を拒み続けたが幾ら親父でも時代の流れには逆らえない。バブルが崩壊した後は藤原側から頭を下げる形で佐丸に出店する事が決まってた。」


そうして会長は百貨店業界では伝説のバイヤーという評価を受けた。

だけど奥様を亡くした会長に、そんな評価は虚しいだけだと会長は部長のようなやり手のバイヤーを嫌うようになった。


「なら私がくだらない幸せを望む事は愚かな事?」


今が幸せだと感じる度に必ず付いて回る不安。

私は佐丸の跡取りの婚約者に相応しくない。

佐丸に移動となってからはその不安が私の中で日に日に大きくなってる。

そんな私の不安を毎日のように部長にぶつけてる。

部長はただ穏やかに笑って私を引き寄せてはキスをしてくれる。


「だから親父の言葉には振り回されるな。紫乃は俺の紫乃で何かを失う必要があるというなら俺は佐丸を捨てても構わない。」


会長の気持ちを無視する俺様は私をあやすように抱き締める。


「佐丸を捨てるとか無理よ。」

「出来る。梨花には高崎が居る。本当は梨花もその方が良いんだよ。」


部長のお姉さんは1度結婚に失敗した。

以来、2度と結婚はお断りだと宣言する。

そこからは部長が継ぐか梨花さんが継ぐかと跡取りの問題が変わっていく。


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