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幸せの頂点
第21章 本来
佐丸は代々女性が継ぐ。
ならば梨花さんが高崎さんと結婚した段階で継ぐのが自然な流れになる。
そこに私が現れた。
部長は私以外の女は嫌だと会長に言い切った。
そのせいで会長が私を品定めをして私は部長の婚約者という立場を有耶無耶に手に入れる。
「部長は佐丸を継ぎたくないの?」
彼は自分が嫌な事は絶対にしないと思う。
「紫乃次第だ。紫乃は耐えられるか?今日の藤原の結婚式を見てどう思った?あれが本当に紫乃が求める幸せの姿だと思えるのか?」
部長にそう聞かれて固まった。
何時間も雛壇に飾り物のように座る夫婦は笑顔を絶やさずに幸せを振り撒いてた。
だけどあれが本当に幸せかと聞かれたら確かに答えには迷う。
花嫁は時折、具合が悪そうで花婿がかなり気を使ってたシーンも見た。
それでも我慢をして雛壇に座り続ける夫婦は本当に幸せなのか?
「まあ、花嫁が具合を悪そうにしてたのは妊娠中って理由もある。」
部長が可哀想にと呟く。
妊娠中でも簡単にはあれだけの結婚披露宴を中止に出来ず、ひたすら耐える事になる。
部長が私の顔を撫でる。
「それでも紫乃は幸せか?」
切ない声に戸惑う。
この手が好き…。
この手が私に触れるだけで私は幸せだと思う。
そこに佐丸の跡取りという立場は必要がない。
私の幸せはこの人が私の傍に居てくれるだけの幸せだと実感する。
「佐丸は…、要らないかも…。」
「それを親父に言えるか?」
また部長の質問に固まる。
「言えない…。」
会長は跡取りに男の子が欲しいと願い奥様という存在の全てを失くした。
その傷付いた会長に会長が夢を見た跡取りも居ないのだと言える訳がない。