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幸せの頂点
第21章 本来
今は彼を理解すればするほどに愛情が深まる瞬間を感じる。
「疲れてるもん。」
「京都行きが決まってからは全く紫乃が触らせてくれてない。」
それはそうだ。
いきなり決まった京都行き…。
まずは披露宴に来るだろうと予想される顧客名簿を必死に頭に叩き込み、そんな中でも慌てて披露宴に参加する為のドレスをお姉さんにお願いして選んだりと忙しない日々のまま前乗りしたホテルでは寝不足はお断りと部長を跳ね除けて無理矢理に眠った。
その間は部長を蔑ろにした事実は否定しない。
「私じゃ…、部長の秘書が務まらないもの…。」
野菜だけが専門だった普通のバイヤーとはレベルの違う仕事。
やり甲斐はある。
だけど未熟過ぎる私にはとてつもなく手に負えない仕事を今はしてる。
やり甲斐のある仕事も素敵な彼氏も全てを手に入れたはずなのに…。
私のプライドは毎日傷付きズタボロにされてる毎日を過ごしてる。
これが幸せの頂点…。
思わず部長の頬を指で摘んで捻ってやる。
「何?」
「部長が憎いの。」
「俺が?」
こういう時は必ずとぼけて返事をする。
しかも、ちゃっかりと私の帯を解き始める。
「せっかく着せて貰ったのに…。」
「着付けが習いたいなら藤原に習いに行くか?」
そんな習い事に行く時間の余裕なんか今の私にあるはずがないのをわかってて言う。
俺様にデリカシーはない。
ムカつく…。
「部長なんか大っ嫌い!」
「だから神威だって何回言わせる?」
私と対等で居たいと言う。
こんな人だから腹が立っても怒れない。
「神威…。」
「ん?」
「愛してる?」
「紫乃だけを愛してる。」
これ以上は余計な事を言うなと唇で口を塞がれた。