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幸せの頂点
第4章 絶頂



タクシーは高速道路を走り、特急が停まる大きな駅まで私を送ってくれた。

東京に戻れたのは昼過ぎ…。

着替えをしたい。

だけど百貨店に出勤しなければ無断欠勤になる。

ヒールは農道を歩いたせいで泥と傷が付きボロボロになってる。

スーツも皺だらけ…。

メイクも適当…。

それでも出勤だけはしなければと百貨店に向かってタクシーを飛ばす。

百貨店の人間として恥ずべき姿で出勤した私を他のバイヤーが驚いた顔で見る。


「新人の阿久津さんだよね?今日までは佐伯部長と出張中じゃなかったの?」


目を丸くした男の人が聞いて来る。

社員の予定が書き込まれたホワイトボードには私と部長が出張となってる。


「えっと…。」


答えに迷う。


「佐伯部長の洗礼が終わったって事だな。」


もう1人の男の人がゲラゲラと笑い出す。

最初に私に声を掛けてくれた人が笑いを堪えるような微妙な表情を浮かべる。


「こいつは金子ね。俺は高崎…。」


ゲラゲラと笑い続ける人を指差しながらの自己紹介をしてくれる。


「阿久津です。」

「うん、知ってる。金子も言ったけど、部長の洗礼は無事に成功したの?」

「洗礼?」


部長に抱かれた事実がもう社内で広まってるのかと思うと身体が震え出す。


「部長って…、新人は必ず初日に連れ出すから迂闊に挨拶も出来ねえよ。」


金子さんが口を尖らせて部長の文句を言う。


「しょうがないよ。あの洗礼で佐伯部長について行けない奴は皆んな3ヶ月以内に辞めてるじゃん。」

「ついて行けても辞めたくなるけどな。」


高崎さんと金子さんの会話を聞いてるうちに気分が落ち着いて来る。


「佐伯部長って…、どんな人?」


素朴な疑問を高崎さんと金子さんに聞いてた。


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