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幸せの頂点
第4章 絶頂



「どんなって…。」


高崎さんがまた微妙な表情を浮かべる。

高崎さんは言葉を選ぶ慎重な人だと思う。

対する金子さんは…。


「洗礼で阿久津さんが見たまんまの人だよ。傍若無人の絶対王者。俺様について来いな人。」


と茶化すように言う。


「それでも、ちゃんと部長について行ければ絶対に間違いはないよ。」


フォローするように高崎さんが付け加える。


「確かに間違いはないさ。でもプライドはズタズタにされるよ。阿久津さんなんか女性なのに…、熊みたいな部長に振り回されたら大変だと思う。」

「金子も俺も初日は部長に完敗したもんな。」

「高ちゃんはまだいいよ。俺なんか初日だけで終わらなかったんだからな。」


金子さんが口を尖らせる。


「初日で終わらなかった?」


金子さんは何日も部長にいびられたのだろうかと不安になる。


「俺の場合、イベント中だったんよ。『世界のビールフェア』って期間限定の企画。そのビールに合う食材集めを部長と手分けしたの。」


2年前の事だと懐かしそうに金子さんが言う。

そのビールフェアには私も克とのデートでお客として来た事がある。

金子さんはハムやベーコン、ソーセージやチーズなどビールに合うと思われる食材を求めた。

その中で扱われた最高級品のベーコン…。


「あのベーコン!私も買って帰りました。」


私もそのベーコンのファンだ。

そのビールフェアで出会ったベーコンは今や克と私のお気に入りの食材だ。


「それが佐伯部長が引っ張って来たベーコンね。」


机に頬杖を付いて金子さんが不機嫌を表わす膨れっ面を私に見せつける。


「あのベーコンが?」

「俺はさ、海外輸入の商社を虱潰しに回ったんよ。それこそ東京中のハムやソーセージ、チーズを扱う輸入業者の全てを歩き回ったんだぞ。」


えっへんと金子さんが胸を張る。

世界中からの食材…。

しかもヨーロッパからの最高級食材を集めた金子さんは自信満々だった。


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