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幸せの頂点
第4章 絶頂



そこまで話すと高崎さんがクスクスと笑い出す。


「張り切った金子がボロボロになってんのに部長が涼しい顔であのベーコンを持って来たんだよな。」


高崎さんの言葉に金子さんが嫌な表情をする。


「日本で製造されてるベーコンだよ?しかも個人が作ってるって希少品。ヨーロッパで最高級品という評価を受けてて、わざわざヨーロッパからミシュランクラスの一流シェフが買い付けに来るベーコンを持って来るとか有り得ない。」


売り上げは当然のように部長が仕入れたベーコンが一番になった。

フェアが終わった今も、そのベーコンは数量限定商品としてこの百貨店で扱われてる。


「佐伯部長には勝てないよ。だけど部長を超えられる食材を求めれば部長は俺達を認めてくれる。」


高崎さんの言葉に金子さんが頷く。

部長について行けばいい。

高崎さん達はそう言うけど…。

私はその洗礼に失敗した気がする。

私は何も出来なかった。

部長に抱かれただけの女だった。

落ち込む私の頭にポンッと紙が当たる音がする。


「出勤してたのか?」


私の背後から野太い声がする。


「「部長っ!?」」


高崎さんと金子さんが同時に叫ぶ。


「お前ら、くだらないおしゃべりしてんなよ。バックヤードまで聞こえてたぞ。」


部長が金子さん達を窘める。


「それと阿久津、おめでとう。爺さんが契約にサインしたぞ。内容を確認してから店頭に出せる準備をしておけよ。」


部長が私の頭に当てた書類を私の机に置く。

あのトマトの仕入れ契約。

数量限定商品の扱いにはなるけど、間違いなく出荷して貰えるという契約書に目を通す。


「疲れてんだから、阿久津はさっさと帰れよ。」


ぶっきらぼうな言葉。

私を気遣う優しさを含む言葉…。

あれから部長だけが老人のところに引き返して契約を取って来てくれたんだとわかる。


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