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幸せの頂点
第4章 絶頂
部長の体温を感じる距離…。
部長の指先が私の顎を持ち上げる。
こんな場所で…!?
その手から逃れようと無様にジタバタとする。
「紫乃…、あれはお前の仕事だ。心配しなくともお前はそういう評価に値するバイヤーだ。」
「だけど…。」
「もしも、紫乃を使えない奴と判断してたなら今すぐにでも紫乃の部所変更を上に報告してる。」
部長の額が私の額に触れて来る。
「紫乃は身体で俺に媚びを売って仕事を取ったとか思ってんのか?」
「違います!」
「なら、自信を持てよ。爺さんが納得したのは紫乃の説得だ。俺は契約をまとめただけだ。」
泣きそうになる私の頬に部長の唇が触れる。
「今日は帰れ…、ボロボロになってんぞ。帰ってちゃんと疲れを取って、明日からしっかりと自分の仕事をすればいい。一流になりたければ細かい事でウジウジするな。常に動ける体制を取っておけ。」
部長の言葉に頷くしか出来なかった。
私の頭を軽く撫でた部長がバックヤードから店舗に向かう通路へと立ち去る。
部長の声が耳から離れない。
紫乃と私を呼ぶ声に毎回のように胸が高鳴る。
その思いを振り切る。
帰らなきゃ…。
克が待つ家へ…。
部長とは2度とあんな事になっちゃいけない。
私は克を愛してる。
私の幸せの頂点は克と結婚する事だもの。
「お疲れ様でした。」
金子さんと高崎さんに頭を下げて帰る事にした。
金子さん達は同情する目で私を見る。
佐伯部長の洗礼を受けた仲間。
そうやって彼らは私を受け入れる。
部長に認められなかった人はこの部所から立ち去る事になる。
部長自身も私を仕事の出来ない人間と判断すれば切り捨てると宣言した。