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幸せの頂点
第5章 主婦



高崎さんが自分を責めてるのを感じた。


「今も彼女ですか?」

「今は主婦。あれから直ぐに結婚した。」


照れくさそうに高崎さんが笑う。


「なら、私の歓迎会なんかは早く終わらせて帰りたいですよね?」


冗談っぽく高崎さんに言う。


「そうして貰えると助かるよ。」


私が仕事を終了すると決めた事に高崎さんが安心した笑顔を見せてくれる。

高崎さんが私をずっと心配そうに見てたのは奥さんと重ねて見てたからだと理解した。


「顔を洗って来ます。」


さすがに泥だらけの顔で歓迎会には行けない。


「早くしてね。」


高崎さんが笑って私をトイレに見送ってくれる。

高崎さんの為に急がなきゃ。

部長の為じゃない。

高崎さんの為…。

奥さんの為に早く帰りたい高崎さんの為よ。

高崎さんが帰る時に私も一緒に帰れば克の為にも繋がるのだから…。

何度もそう自分に言い聞かせる。

そうしなければ…。

部長に流されそうになる自分がわかる。

私が結婚するつもりかを最初に確認して来たのはセクハラではなく優しさからだ。

あの人は今も高崎さんの奥さんが流産させてしまった自分を責めてる。

だから私に優しくする。

ぶっきらぼうで俺様だけど、そこには必ず彼の優しさが存在する。

そして私に期待させる。

幸せの頂点は克との結婚よりも部長との仕事の先にあるのだと…。

高崎さんの奥さんの話を聞いて主婦になっても幸せは変わらないかもしれないと考える。

ボロボロになってまで仕事をする必要があるのかどうかすらわからなくなって来る。

流産をしてまで仕事をしても本当に幸せなのか?

もう28だ。

子供を持つという意味をもう一度、克と話し合う必要があるのかもしれない。


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