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幸せの頂点
第8章 店長
夕べとは明らかに違うレイアウト…。
私の知らない商品が並べられ、幻のトマトがその真ん中に堂々と陳列されている。
「なんで…?」
どうにもならない売り場だからと私はトマトだけを売り場の入り口に配置する予定だった。
トマトだけが売れてくれればとギリギリの選択をしたはずなのに…。
今はトマトに相応しい売り場に変わってる。
「やっぱり見に来たんだ。」
私の後ろから呆れた声がする。
ゆっくりと振り返れば、ちょっと怒った顔をする高崎さんが私を睨む。
「高崎さん…。」
「ちゃんと任せてって言ったよね?」
高崎さんが苦笑いをする。
「あのままじゃ、絶対に休日返上で阿久津さんが売り場に現れるからって部長が言うから慌てて金子と他所の店舗から在庫を貰いに行ったんだよ。」
私が納得するようにと高崎さんが説明する。
「高崎さんと金子さんが?」
「レイアウトは山内。ポップは三浦が得意だからやってくれたけどね。」
ポップは商品の広告。
広告の文言に売り切れ続出、限定販売と大袈裟に書かれたカードがトマトの入った籠に付いてるのを見れば自然と笑いが込み上げる。
「ありがとう…。」
心から高崎さん達に感謝する。
「でも、丁度良かった。あのトマト…、在庫が残り3袋しかないんだ。次の入荷予定は?」
高崎さんの言葉に狼狽える。
「次の金曜日の夜の入荷。」
まだ初日の午前中なのに、こんなに早くトマトが売り切れるとは思っても見なかった。
「なら…、その3袋で終わりだ。」
高崎さんが肩を竦める。
元々が限定品という販売だから品切れは仕方がない。
次からは土曜日に50セット、日曜日に50セットという売り方に変更する必要がある。