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幸せの頂点
第8章 店長
このトマトの為に私がボロボロになったのだと自己完結で納得する。
私は乾いた笑顔を浮かべる。
トマトもベーコンもあの人が見つけたもの。
あの人に食べて欲しかったとぼんやり考える。
克と居るのに…。
ここが私の居る場所なのに…。
全てが色褪せて見える。
ふと気付けば私を包み込むような腕の感覚を感じる。
それは幻。
私の身体が覚えてる記憶が錯覚を起こしてる。
『紫乃…。』
深い声が聞こえる気がする。
「紫乃?」
克の声で我に返る。
「お風呂を済ませちゃいなよ。明日は仕事だろ?」
明日は日曜日で克は休み…。
私だけが仕事というすれ違いが始まる。
先にお風呂を済ませて私だけが先にベッドに入る。
神威…。
会いたくて堪らない。
今日の嬉しさを誰よりも貴方と一番に分かち合いたいと思った。
私の初めての仕事…。
貴方が認めてくれたかが気になって眠れなかった。
翌日は私も店頭に立つ。
トマトを求めるお客様への対応が必要だから…。
時々、部長の姿を探す。
私から逃げてるのかと思うほどに彼の姿は何処にも見当たらない。
「阿久津さん!こっちー!」
お昼休みに裏口へ出れば私に元気に手を振る里緒ちゃんが居る。
もう1人はちょっと奇抜なファッションの女の子。
「ヒステリックのナナ店長。」
黒い革のショートパンツに膝までの長さがあるブラウスを羽織るスタイルの良い女の子を里緒ちゃんが私に紹介してくれる。
「チースッ!」
ボーイッシュなナナさんは僕っ娘な女の子。
大きな瞳をクリクリとさせるショタな女の子にドキドキする。
「ナナさん…、カッコいいでしょ?」
里緒ちゃんが私に同意を求めて来る。