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幸せの頂点
第8章 店長
童顔だけどもう25歳になると里緒ちゃんが嘆く。
「店長って責任が付くじゃん?」
同じ25歳で店長になったナナさんに里緒ちゃんが確認するように聞く。
「当たり前じゃん。僕はヒステリックが好きだから店長の道を選んだの。責任も当然出て来るよ。」
ナナさんが厳しい顔で里緒ちゃんを窘める。
百貨店の店子であるショップは目標売り上げが達成出来なければ百貨店から撤退する事になる。
自分達のブランドを守りたいと仕事をする彼女達も大変なんだと感じる。
「彼氏も居ない。店長にもなる勇気もない。人生が見えない。お先が真っ暗な気がする。」
「演歌か?」
里緒ちゃんとナナさんが漫才をしてる。
まだ20歳だという美優ちゃん。
「里緒ちゃんって佐伯部長にアタックするって言ってなかった?」
しれっと部長の名前が出て来て予想外だった私の喉にお寿司が詰まる。
「さーえーきー?無理無理。」
「なんでー?」
「あの人、好きな人が居るもん。」
「そーなの?」
そんな会話に1人でドキドキとする。
部長との関係がバレたら彼女達に八つ裂きにされそうで落ち着かない。
「うちの百貨店の人?」
美優ちゃんの質問にまたお寿司が喉に詰まる。
「多分、美優は知らないと思う。ナナさんは知ってるよね?」
里緒ちゃんがナナさんの顔を覗き込む。
美優ちゃんが知らない?
誰だろう?
私以外にもまだ女が居るんだ。
さすが欲しいものは手に入れる主義のバイヤーだと胸がムカムカして来る。
ナナさんが里緒ちゃんを慰めるように眉を潜めて苦笑いを浮かべる。
「あの人は百貨店を辞めたじゃん。」
もう居ない人だとナナさんが言う。