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幸せの頂点
第9章 感覚
「フレンチ…、嫌いか?」
「好きです。」
「なら、さっさと食えよ。」
ぶっきらぼうな言い方。
ふと思う疑問を部長にぶつける。
「部長…、どうやって支払ってるのですか?」
私の言葉に部長が目を丸くする。
お姉さんのランジェリーショップはともかく、ブティックでも化粧品売り場でも部長は1度も財布を出さずに買い物を済ませてる。
うちの百貨店じゃ有り得ない買い物の方法。
一般的な顧客では絶対に出来ない買い物のやり方をしてる部長が怖くなる。
「なんだっけ?なんかファミリー会員ってのがあるんだよ。」
とぼけたように部長が話す。
ファミリー会員。
年間に一定の額の購入をする顧客に対する百貨店の特別サービスの事だ。
「年間500万以上だったかな?」
家族全員の購入額が500万を超える!?
部長の話で500万という数字だけが宙を浮く。
「まあ、だから…、支払いは口座から勝手に落ちるらしいな。」
適当な事を部長が言う。
「それって部長の口座じゃないですよね!?」
私に買い与えた物を部長の家族が支払うとかおかしいでしょ?
感覚がおかしい部長を睨む。
「いや、確か俺の買い物は俺の口座だぞ?」
平然と部長が答える。
「それでも部長の金銭感覚っておかしいです。」
「そうか?」
「そうです。」
「俺が欲しいものってほとんどねえからな。適当に飯食ってビール飲むだけの生活で給料なんか半分以上が手付かずのまま。」
「はあ?」
「だから本気で欲しいと思った紫乃に金の糸目とか付ける事はしない。それだけの事だ。」
自信たっぷりなギラギラする野生の目をされると逃げられないと思う。
とにかく普通の人とは感覚が違い過ぎる事だけはなんとなく理解をした。