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スキンのアンニュイから作品を作ってみませんか?
第9章 匿名希望【ビター・トラップ】
怜悧な顔でねっとりとそう告げると、彼の顔は私の胸元に沈んだ。
 付け根からもったいつけて降りていった唇が膨らみを這い回り、確信を含んだ鼻先でつんと揺らす。すると私の上半身はびくりと勝手に震えて、彼は気をよくしたように何度かそれを繰り返した。
 ふるん、ふるんと柔肉が揺れるたび、ぞわぞわとせり上がってくる快感未満の淡い刺激。それ以上のものを求めたいみたいに、先端が徐々に硬くしこっていく。

「そうそう。がまんがまん……」

 彼は楽しそうに言うと、私をじいっと覗き込みながら、頂点の尖りを舌で舐め上げた。

「っ――!」

 喉奥で息を溜め、声が出ないように必死で堪えた。
 視界のすぐ下には愉悦をにじませた彼の表情と、ぬらりと光る突起。そこはねだるかのように、すっかり大きくなっている。
 短い呼吸を何度もしながら、また訪れるであろう刺激に備えた。まるで雷を見ているような、張り詰めた緊張が漂っている。
 それを見透かしたみたいに彼が大きく舌を出し、私は顔をしかめて構えた。けれど、一秒、二秒と数えてもそれはこなくて、少し息を整えながら恐る恐る片目を薄く開く。と、その隙を見計らったように舐められた。

「あっ!」

 一瞬だけ上がってしまった鋭い嬌声にはっと口を噤むも、もう遅い。彼はしたり顔で「あーあ」と残念そうな素振りをみせ、とうとう先端を大胆に唇に含んだ。

「……ふ、ぁ」

 ちゅく、とリップ音を立てて離れ、再び喰む。唇で嬲り、舌先で転がし、絶妙な力加減で刺激を与え、時折私を覗い見る。
 その目から逃れようと、私は首を逸らしてぎゅっとまぶたを閉じた。
 感じなければいい、だなんて無理な話だ。火なんてとっくについていたし、抵抗しようという気ももうなかった。太ももを揺するようにこすり合わせ、欲を叶えてくれるなにかを求めさまよう。
 こぽりと中から滲み出してくるのを感じて、うっかり甘く鼻が鳴った。

「どうした? そんな腰揺らしちゃってさ」

 どうしたもなにもない。それよりも早く、なんでもいいから、ぐずぐずになった下腹の疼きを止めてほしい。
 懇願するように首を横に振る。すると私の腕を掴む彼の手が緩み、私はその手を掴み返した。
 この指だ。この長い指にかき回されるのが、私はすごく好きだった。

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