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スキンのアンニュイから作品を作ってみませんか?
第2章 弓月 舞 様【君の視線が絡みつく】
私に絡み付く毒蛇が、チロチロと舌を出して食べる隙をうかがっている。
その瞬間に怯えているの。
だから少しでも長引かせなきゃって…!
「…これ で、先にbの値が求まって…‥‥」
「……」
「値を式に代入するの‥…ッ‥…そしたら」
「a=5/12π、だね」
「…っ」
「Pの軌跡が求まったよ。
……解説ありがと、センセ」
…なのに彼は、こんなささやかな抵抗さえ、私に許してくれなくて。
「センセの説明はわかりやすいね」
でまかせだとバレバレな褒め言葉で、抵抗の時間をさっさと終わらせてしまった。
「…ッ…‥ハァ…‥ユウキ…くん」
「……」
解説を終えた参考書を置く。それこそ、音も立たないくらいにゆっくりと──。
すると隣でテーブルにもたれていたユウキくんも、重怠そうに身体を起こした。
彼の右手がこちらへ伸びる。
額に貼り付いた私の前髪を耳にかけ、そのまま顔を持って引き寄せられた。
すぐに反対側の手も添えられる。
私は彼の両手に顔を挟まれ、少し強引に彼のほうへ向かされた。
さっきまで上目遣いだった目が、今度は至近距離で私を見下ろしてる。
「汗を拭いてあげたいけど、手元にタオルが無い」
「ハァ……ハァ……」
「だから舐めていい?」
首が直角に曲がって…ますます呼吸がやり辛い。
暑さにやられて朦朧とした頭は
ユウキくんのぶっ飛んだ言葉を、容易には理解できないらしい。
「って言うか、逃げるなら今しかないと思うんだけど……」
「ハァ、ァ…」
「聞こえてる?」
「……動け ない」
ただ…彼の言葉が何であれ私はもう動けなかった。
逃げられない。
今となっては逃げたいのかも……わからない。
「…‥ユウキくんのせいで‥‥動けない」
「……フ」
また涙が出そうになるのを堪え(コラエ)て、非難がましく彼を睨んだ。
なのにユウキくんは、ナゼか頬を赤らめて
これ以上ないほど優しい微笑みを浮かべた後、そっと唇を重ねてきた。