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妹
第2章 晦日(つごもり)
(やっぱり、あのままで終わるわけが無いわよね――)
雅は加賀美を睨んだ。
「俺だってこんなことしたくないけど、雅、つれなさすぎなんだもん」
そう言うと、加賀美は雅の長い黒髪を一房取り指に絡ませ、誘うような顔で雅を見返す。
周りの女生徒達が小さな声できゃっと黄色い声を上げたのが耳に入り、雅は加賀美から体を遠ざける。
髪はするすると、加賀美の指の間から抜けていった。
「……私でなくても、先輩なら掃いて捨てる程、女性のご友人がいらっしゃるでしょう?」
現に加賀美が他のパーティーに毎回違う大人っぽい女性を連れてきているのを、雅は目撃している。
「いるけどさ〜、あれはガールフレンドじゃん? 雅は友達じゃないし」
「………………」
雅はなんだか、無駄なやり取りをしている気になり小さく溜め息をつくと、机の上に広げていた書物や筆記用具を片付け始める。
「また、だんまり?」
加賀美は机に両腕を組んで顎を乗せると、上目使いに雅を見る。
自分の容姿を百パーセント活用して、整った鼻筋や年相応の可愛らしさをアピールしている。雅は妙にそこだけは感心してしまったが、すぐ我にかえる。
「ですから……、何故友達でもない私を、連れていく必要があるのかと――」
「お嫁さん候補だから」
鞄に筆記用具を入れていた視線を上げると、加賀美が真剣な顔でこちらを見ていた。
「………………はい?」
「あれ、聞こえなかった? お・よ……」
「ちょっ、やめて下さいっ!」
雅は慌てて、ガタンと椅子を引いて立ち上がってしまう。
あまりの雅の取り乱しように周りの生徒逹は、今度は盗み見ではなくまじまじと二人を見比べていた。
本来生徒の規範となるべき自分が、図書館でこんな失態を繰り返すとは、今日は厄日かしらと雅は頭痛を覚える。
「ぷっ、雅が怒った」
脈絡も無くいきなり吹き出した加賀美を、雅は唖然と見てしまう。
(――はあ?)
「雅って、いっつも愛想笑いばかりで、ぜんぜん感情見せないじゃん? だから怒ったとこ見れて、面白いなって」
(なに、この人……ヤブ医者といい、私の周りには変人しかいない――)
「雅と結婚したら、毎日色んな顔が見られて、楽しそう」
加賀美も椅子から立ち上がり、二十センチの身長差から見下ろしてくる。