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第4章 弓張月(ゆみはりづき)

その作業は、思ったより時間が掛った。

焦りが出てきて、セーラー服の背の内側をつーと冷たい汗が伝う。

ガリガリと歯が裁断する音が、密室に妙に大きく響く気がした。

(あと一束――!)

雅は残りの一束をねじ込むように入れるが、まだ少し残っていた前の紙束と絡まり、詰まってしまった。

反転ボタンを押し、詰まってしまった紙くずを取り除いていると、廊下から微かに声が聞こえた。

「高嶋さん、先月の旅費精算出されてないですよね……」

雅は冷水を一気に浴びせかけられたように、さっと全身の血の気がひくのを感じた。

近くまで敦子が戻って来ていたのだ。

耳の中でどくどくこだまする脈拍音。

早くしないと見つかってしまう。こんな場面を見られたら、なんの言い訳も効かないだろう。

焦る手で詰まりを取り除き、最後の一束を慎重に滑り込ませる。

書類の隅まで飲み込んでもなお、惰性で機械音をならしつづけるシュレッダーのメインスイッチをオフにし、雅はようやくほっと胸をなでおろす。

なにも不備がないか辺りを見回すと、デスクの上に書類の入っていた鴨志田の封筒が目に止まる。

(私のバカ――っ!)

自分を叱咤して封筒に手をかけたその時、ガチャリ開かれる扉の音。

「雅さん、ごめんなさいね、お待たせして……あれ、顔色悪いわよ、大丈夫?」

敦子の指摘についびくりと小さく反応してしまった雅は、冷静を保てと自分に言い聞かせる。

「あ……ちょっと冷えてお腹が痛くなってしまって。化粧室に行く時間はありますでしょうか?」

雅は押さえていた腹部を両手で庇う。

「勿論、まだ時間があるから大丈夫よ」

すみませんと断って部屋を出る。

雅は駆け出したい気持ちをぐっとこらえて、早足で化粧室に向かった。

化粧室には誰もいなかった。

雅は制服の腹部に隠し持っていた封筒を取り出し素早く破ると、入ってすぐに見つけた回転式の蓋が付いたシルバーのダストボックスに捨てる。

詰めていた息を吐き出す。

全身から力が抜けて崩れ落ちそうになり、雅は洗面台に手を付き体を支えた。

冷や汗でキャミソールが体にベットリと張り付き、気持ちが悪い。

あの時、敦子が帰って来た時――雅はとっさに手にした封筒を折って制服の下に隠した。

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