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第4章 弓張月(ゆみはりづき)

「雅さん、高嶋さんに付いていて、勉強になるでしょう」

宮前の話題が雅に移ったので、敦子は断りを入れて電話をかけに行った。

「ええ、叔父様。敦子さんの仕事の進め方はとても勉強になり、今すぐでも自分に役立てられる事を学ばせてもらっています」

部下達が自分の方をボンヤリと見ているのに気づき、雅はそちらに向けて学生らしい誠実そうな笑顔を振り撒く。

笑いかけられた部下達は、何故か赤くなり俯いてしまった。

「うちの倅(せがれ)が高等部で雅さんと同じ理事をしているが、いつも迅速かつ適切な判断を褒めているよ」

部長の息子、雅の従兄弟にあたる宮前和志は、数いる従兄弟達のなかでも冷静沈着、私情を挟まず物事を判断出来、もちろん成績優秀な人間だ。

要するにこの場合、本当に雅を褒めている訳ではなく、自慢の息子を雅に誉めちぎって欲しいのだろう。

(部下達の前だから? 本家の鴨志田である私の口から誉められたいのかと取るのは、あまりにも穿った見方かしら――)

雅はそう心の中で叔父を誹(そし)る。

まあ和志は本当に優秀だから、誉めるのはやぶさかではないと雅が口を開こうとしたとき、ノックして敦子が入ってきた。

真っ青な顔をした敦子は深々と頭を下げた。

「宮前部長、社内の者に確認しましたが……契約書は弊社にはございませんでした」

「……どういう事だね? 契約書が御社に着いたのは間違いないのだろう?」

椅子を引いて立ち上がった部長は、訝しげに聞く。

「はい、私が契約書をチェックしたので、間違いはありません。……紛失したと思われます」

申し訳ありません、と敦子は再度頭を下げる。

「紛失したって一体何故……? あんな契約書、別に取っても第三者には全くメリットの無いものだろうに――」

部長は腑に落ちないといった表情で首を傾げる。

聞かれた敦子も一瞬眉をひそめたが、すぐに表情を改める。

「今、会社中を探させていますが、万が一紛失が確定した場合、再発行になります」

「それは……恐らく印紙代は再度納税になりますよね? 売買金額が五億円ですから印紙代は二十万円、それを部数分……」

一部始終を見ていた社員が口を挟む。それを口火に他の社員たちもざわつき始めた。

「印紙税については税理士に確認してみます。賠償につきましては……持ち帰り木村と相談させてください」

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