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第4章 弓張月(ゆみはりづき)

本当に申し訳ありませんと、敦子は再度深々と頭を垂れた。

会議室に重苦しい空気が立ち込める。

ここで話していてもどうにもならないという部長の鶴の一声で、その場は解散となった。

会議室を出た敦子と雅は、一連の件を聞き付けた月哉の秘書である東海林に伴われ、一階エントランスまで一緒に降りた。

「雅様、本日の同行はここで終わられてはいかがですか?」

敦子の蒼白の顔色から察した東海林が、雅に問うてくる。

「敦子さん……大丈夫ですか」

雅は心配顔で尋ねる。

「ごめんなさいね、これでは取材にならないわね」

無理に作っているとバレバレの笑顔を顔に張り付けた敦子は、それでも雅の事を気遣った。

心臓に鋭利なガラスの破片が刺さったかのように、雅の胸が痛む。

「あ……あの、敦子さん、借入れ先の銀行頭取はクラスメイトのお父様ですし、私自身も面識があります。もしよろしければ――」

今更ながらに自分の仕出かしたことの恐ろしさが身体の芯から震えを呼び起こし、雅の発する声まで震わせる。

「雅さん……ふふ、ありがとう。でもそれは何の解決にもならないわ。自分の事は自分で責任を取らなくては――」

敦子は自分に言い聞かせるように言うと、雅達に別れを言ってタクシーに乗り込んだ。

タクシーの後部座席に座った敦子の背が殊更小さく見え、その姿が見えなくなってもなお、雅は立ち尽くしていた。 

(お兄様に色目を使うあの人がいけないのよ! あの人の香りを付けて帰って来るお兄様が、いけないのよ……でもあの人にだけでなく、鴨志田にも不利な事をしてしまった――)

言い訳と後悔がない交ぜになり、雅の小さな頭の中をぐるぐると掻き乱す。

「雅様、昨日頼まれておりました件についてですが……」

東海林が黙り続ける雅に遠慮がちに話しかけるまで、雅は動けなかった。

ロビーで話す内容でも無いため、重役専用小会議室に移動する。

雅は窓際にもたれかかると、秘書に報告を促す。

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