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第4章 弓張月(ゆみはりづき)

「お兄様になにか動きはあった?」

「お答えになっているか解りませんが――大阪支店のトラブルを解決された後、社長と木村先生、大阪支店長、高嶋先生の四人でヒルトン内にて御会食をなさいました。木村先生達がヒルトンにお泊まりでしたので。木村先生はお疲れだったのでしょう、酔いつぶれられ、社長と私と高嶋先生でお部屋までお送りしました。高嶋先生も結構酔われていましたので社長がお部屋までお送りされ……その後は宿泊先のリッツカールトンに、お戻りになりました」

東海林は聞かれたままをすらすら答えた。

月哉が敦子を部屋に送ったと聞き、雅の心はどうしても動揺してしまう。

震えてしまいそうな手を抑えるため、利き手を片方の手でぎゅうと握りしめる。

「……お兄様がホテルへ戻られた時刻は分かる?」

「……私は先にリッツへ戻るようにと指示されたため正確には解りかねますが、私の部屋は社長のスイートの隣でしたので……恐らく明け方にお戻りになったと思います」

雅は鈍器で殴られたかの様に目の前が一瞬暗くなり、口のなかに鉄サビのような味を感じた。

「……………………」

月哉の朝帰り。

その現実はすでに今朝突きつけられていたが、第三者に改めて告げられると雅は受け止めきれず、思考が拒否反応を示した。

どのくらい長い間反応出来なかったのだろう。

月哉の秘書の前でこのまま醜態をさらすわけにもいかず、雅は気を奮い立たす。

「そう。ありがとう」

雅は何とか礼の言葉を絞り出し、その場を立ち去ろうともたれていた窓から背を離す。

しかし長い間雅の反応を待っていた東海林は何故か動かず、注意深く雅をじっと見つめている。

(そうだったわ――)

東海林の様子に雅は思い至る。

月哉の忠実な秘書に、裏切りともとれる行為を働かせたのだ。

それ相応の見返りを与え、口止めもせねばならない。

「何がいいかしら? 小切手ならすぐに用意出来るのだけれど――」

雅は月哉以外に唯一慕っている東海林相手に、今までに口にしたことのない感情のこもらない声を掛けた。

足元に置いていた小切手の入った学園指定の鞄を取ろうと伸ばした手を、東海林に掴まれる。

振りほどこうと思えばいつでも振りほどける程度に握られた自分の腕を、雅は空虚な瞳で捉える。

「……抱きしめても、宜しいでしょうか」

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