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第4章 弓張月(ゆみはりづき)

雅は訳の分からない恐ろしさから寝台の上から動くことも出来ず、じっと一人で怯え続けた。

十分ほどそうしていると、やっと気持ちが落ち着き、冷静さを取り戻せた。

(……悪夢なんて、見慣れているのに)

雅は物心ついた頃から、三日に一回は何らかの悪夢にうなされ、夜中に目を覚ましてきた。

詰めていた息を吐き出すと、寝台から降りぐっしょりと濡れたネグリジェを脱いで、ぺたぺたと裸足で寝室を出る。

バスルームの電気をつけると大きな姿見に自分の貧相で頼りない白い身体が映った。

この屋敷には数十人もの使用人がいる。

しかし雅は悪夢を見た後はいつも、一人ぼっちで広い屋敷に閉じ込められているような錯覚に陥り、心細くなる。

そして、今日ほどそれを痛感したことは無かった。

(一人ではないのに、独りなのだ――)

雅は感傷的な考えを首を振って頭から追い払い、熱いシャワーの中へ飛び込んだ。                    






取材四日目。

敦子は紛失した契約書の対応で終日外勤していた為、雅は敦子に付いて弁護士を目指している木崎という男性社員に、敦子の部屋で資料の収集方法について教わっっていた。

一通り教わってから二人で敦子から依頼されていた資料を揃える。

一段落付いたところで、木崎の入れてくれたコーヒーで休憩することになった。

「雅ちゃん、お砂糖とミルクいるよね?」

見るからにお子様の外見から判断されたのだろう、木崎は応接セットのテーブルに、使い捨て用カップに入れたコーヒーとスティックシュガー三つ、ミルク三つを置いた。

「あ、はい。頂きます」

お礼を言ってコーヒーに砂糖とミルクを一つずつ入れて、かき混ぜる。

木崎もそれぞれ一つずつ入れてかき混ぜたのを見て、雅は正しかったと思う。

雅は本来、コーヒーや紅茶に砂糖は入れない。

しかし自分の見た目から、幼くブラックが飲めないという判断をされる事が多く、外ではそう演じる事にしている。

「高嶋先生は仕事中、超甘いコーヒーがぶ飲みするんだよね『頭が砂糖を欲している』とか言って」

よくあれで太らないと感心するよ、と木崎は少し太り気味のお腹をさする。

「敦子さん、毎朝ジョギングしているそうですよ」

雅は本人から聞いた情報を、伝えてやる。

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