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第4章 弓張月(ゆみはりづき)

「おはよう雅、今日はなんだかご機嫌だね」

眼鏡をはずすしぐさに胸が高鳴り、雅の綻んでいた頬が蕩けてしまいそうになる。

(お兄様がもう直ぐ、私の元に返ってきてくださるからですわ――)

「お兄様と一緒に朝食が頂けるからですわ」

赤くなった頬を見られたくなくて、雅は甘えるように月哉の首に腕を回して抱きつき、うっとりと瞼を閉じる。

(この鼓動がお兄様に届いているかしら、全身全霊をかけてお兄様を愛しているこの気持ち、伝わっているかしら――)

「雅は本当に可愛いなあ、そんなに離れたくないなら、お兄ちゃんが食べさせてあげようか?」

いつの間にか運ばれてきていた、アメリカンブレックファストの薄いトーストを長い指でつまむと、雅に一口かじらせる。

「離れたくないのではなくて、離れられないのですわ、お兄様」

雅の腰を抱いたままの兄の腕をちらりと見て、雅は悪戯っぽく笑った。

「またそんな可愛い顔で小悪魔みたいなことを言って。私の子リスちゃんには誰も敵わないな、ね、東海林(とうかいりん)」

月哉が振り向いた先には、秘書の東海林が手帳を開いて立っていた。

いつもは玄関先迄の出迎えだけだったので、食堂にいる秘書に雅はびっくりした。

「そうですね、雅様の為なら全てを投げ打っても良いとおっしゃる男性は、今後ますます増えますでしょうね」

話を振られた東海林は、ポーカーフェイスで意見を述べる。

「ふん、私を倒してからでないと、雅には指一本触れさせないけれどね」

月哉は雅を抱きかかえ直すと、唇を尖らせた。

「おはよう、東海林」

雅は一昨日抱き締められた相手を前にしてもまったくひるまず、兄の膝の上から朝の挨拶をした。

「おはようございます、雅様。ところで社長、本日の田島商事との御会食が先方の都合で延期になりましたので、宜しければ雅様と一緒に外食でも成されてはいかがでしょうか」

「そうか、じゃあ雅の取材が終わったら銀座でお洒落して、食事に行こうか」

東海林の提案を聞いた月哉は、心底嬉しそうな顔で雅に語りかける。

「え、いいのですか? 嬉しい、お兄様大好き!」

雅は兄の首に再度抱きつく。

(ふふ、今日は私にとって良いこと尽くめになる日だわ――)

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