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第4章 弓張月(ゆみはりづき)

振り返らなくても分かる声の主に、雅は「名前で呼ばないで下さい」とぴしゃりと言い返す。

「ご苦労様だね~~、夏休みなのに執行部の仕事をするなんて」

怒られた本人は気にすることもなく、雅に話しかける。

「先輩こそ、どの部にも所属されていなのに、わざわざ登校されて……夏季休暇中はお仕事されているのだと思っていました」

今朝兄に見せたのとまったく正反対の冷徹な表情を顔面に貼り付けて、雅は可愛くない言葉を返す。

「何、俺に興味があるの?」

加賀美は雅の前に回りこむと、執行部の扉の前に立ちはだかった。

整った顔には憎たらしいほどの自信が満ち溢れている。

「全くありません」

雅は表情を全く変えず、言い切る。

「本当に懐いてくれないな~~、雅は野良猫以上に懐いてくれない」

加賀美が苦笑いして雅の方に手を伸ばした時、キャーっという悲鳴が廊下の先から聞こえてきた。

「やだ、加賀美先輩よ!」

「え~~夏休み中なのにお会いできるなんて、私達ラッキー」

「中等部になにか御用なのかしら?」

五人くらいの中等部女子生徒が、口々にきゃあきゃあ盛り上がってこちらに近づいてくる。

加賀美は伸ばした手を引っ込めて、自分の髪をわしゃわしゃと掻いた。

「どいてください」

小さな声で雅が訴えると加賀美はあっさり横にずれ、雅はすかさず執行部の中に逃げ込んだ。

重厚な扉を閉じても興奮した女子生徒たちの黄色い声が、微かに聞こえてくる。

「鴨志田さん、どうかした?」

扉の前で立ち止まっている雅を、不思議そうな顔をした副会長が見つめていた。

「あ、おはようございます、なんでもないです」

雅は笑って誤魔化すと、執行部にいた生徒にそれぞれ挨拶しながら、奥にある書庫へ逃げ込んだ。

(あ~~面倒だわ、いつも絡んできて。でも加賀美の子息だから下手なことは出来ないし……)

加賀美の実家は鴨志田と並ぶ大企業である。

今後業務提携もないとは言えず、無碍(むげ)にすることは出来ないのだ。

(まあ、いいわ。今日で私の悩みはひとつ解消されるでしょうしね)

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