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第4章 弓張月(ゆみはりづき)

敦子から集合時間変更の連絡は無い。

雅が十四時に事務所に到着し、一週間の取材の総まとめ等をしてから、鴨志田本社で十六時からの重役会議に出席することになっている。

十五時に時間変更されたメールに気づいているのであれば、十四時集合では間に合わないのだ。

くつりと暗い嗤いがこぼれる。

(さあ、今度はどう処理されるおつもりかしら――)

目の前にあった大きな鏡でセーラー服のスカーフの歪みをなおすと、雅は執行部の仕事に取り掛かるため、書庫を出た。

約束の時間に間に合うよう、運転手に弁護士事務所へ送り届けてもらう。

雅はいつも通り事務所の皆に一通り愛敬を振りまくと、敦子の部屋までたどり着き扉をノックする。

「はいどうぞ」

思いがけず明るい敦子の返事に違和感を覚えながら扉を開けると、敦子が嬉しそうに笑いかけてきた。

「雅さん、ご苦労様。昨日は取材にもならなかった上に、木崎君のお手伝いまでしてくれたみたいで、ごめんなさいね」  

一昨日見た、蒼白で強張った顔など嘘だったかのように、敦子の顔はいつもの生命力に満ち溢れたそれだった。

「いえ、お忙しいところ無理を言って取材させて頂いているのですから当然です。敦子さん、お元気そうで安心しました」  

社交辞令でかわして雅は微笑んだ。

「雅さんには恥ずかしいところを見られちゃったわね。心配までかけてしまって」

敦子は少し赤くなって頬をかいた。

「そんなことありません。今日で取材が終わるのが、残念で仕方ありません、沢山勉強させて頂きましたから」

確かにいい取材のレポートが書けそうなのだ。

敦子は仕事面では言うことなしだ、加えて対人関係も誰にでも平等に付き合うことが出来、周りからの信頼も厚い。

本当に感じたことを淡々と伝えただけだが、敦子は照れ臭そうにありがとうと呟いた。

「そうそう、社長秘書の東海林様からディナーのご招待かあったわ、私が同席してお邪魔ではないかしら」

「邪魔なはずなんてありませんわ、兄も今回の件についてお礼をしたいと言っています。是非いらして下さい、敦子お姉様……あっ」

雅は咄嗟に口を両手で押さえて、黙り込む。

お姉様と言われた敦子の方は「えっ? えっ?」とびっくりしている。

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