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第4章 弓張月(ゆみはりづき)

「あ、あの鴨園では、下級生が上級生に対して親しみを込めて、お姉様とお呼びする事があるのです……すみません、私ったら」

雅は頬に両手を添えて、恥ずかしがっているように俯く。

「へえ、さすがに伝統のある両家子女の為の学園ね……気にしないで、そう言ってもらえて嬉しいわ」

雅はそろそろと、俯いていた顔を上げる。

「私、妹がいたから……」

寂しそうに微笑む敦子に、話の先を促そうと視線を送る。

実は事前に上がってきた調査報告書で、雅はその情報は掴んでいた。

高嶋美耶子、享年十三歳。

可憐な少女だったらしい。死因はまだ調査中だった。

「雅さんと少し似ているの……だから、初めて雅さんに会った時、びっくりしたわ」

雅は初対面の際、敦子が自分を見て顔色を変えていたことを思い出す。

「……あ、もうこんな時間。雅さん、そろそろ行きましょうか」

腕時計を見ると十五時を指していた。

「はい」

有益な情報は聞き出せなかったが、雅はとても満足そうに笑顔で頷いた。

(さあ、会議が始まったわ。最後のショーのスタートね――)



タクシーに乗り込むと、まず雅の携帯電話が鳴った。

確認しなくても相手が兄の秘書である東海林と分かるが、敢えて「あ、東海林から電話です」と敦子に知らせてから電話に出た。

「はい、雅です。お疲れ様です……え、今日は十六時からと聞いていますので今敦子さんとタクシーに乗りました……はい……え……いえ、聞いておりませんが……」

雅はちらりと敦子を見ると、視線を向けられた敦子は首を少しかしげて雅を見返した。

敦子に電話を代わろうとすると、今度は敦子の携帯電話が鳴る。

「事務所からだわ……はい高嶋……え……いえ聞いておりません……メールですか……確認します」

敦子は一旦電話を切ると、携帯電話から会社のパソコンのメールボックスを、確認しだした。

「……敦子さん、会議の開始時間についてですか?」

遠慮がちに小声で確認する雅に、敦子は頷いて見せる。

手にとるように焦っているのが分かるのでそれ以上は追求せず、繋がったままの東海林の電話に出る。

「先程事務所を出たばかりで、タクシーでそちらへ向かっています……二十分はかかると思います」

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