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第4章 弓張月(ゆみはりづき)

忙しい重役は直ぐ席をたったが、半数位の重役達がそれぞれ思い思いに雑談し始めていた中、常務の厳しい声で広い会議室に沈黙が広がった。

「鶴見、どうして高嶋先生が遅れて来られるのを先に言わないのだ!」

叱責された常務秘書の鶴見は、申し訳ありませんと頭を下げた。

「お前はこの件が重役会議にかけられなかったらどうなっていたか、解らない筈が無いだろう」

この案件に傾倒していた常務はカンカンになって、秘書を他の重役の面前にも関わらず罵倒した。

「ち……違うのです宮前常務、鶴見様は確かに私に会議の時間変更のメールを下さっていたのです」

割って入った敦子を、常務が訝しげに見やる。

「……どういう事ですか、高嶋先生」

「時間変更に応じられない場合は御一報下さるようにと、メールを頂いておりました……ただ私がメールを確認し忘れ、十六時から開始だと思い込んでいたのです」

離れたところにいる雅にも、敦子の声が震えているのが分かった。

常務は盛大な溜め息をついて見せた。

「高嶋先生、貴女は先日も弊社の契約書を紛失されたと聞いています。一体貴女の事務所は、どうなっているのですか」

元々女性蔑視の傾向がある常務は、ここぞとばかりに批判する。

「申し訳ありません……」

敦子の悲痛な謝罪が、室内に響く。

雅は東海林のスーツの袖先を少し握り、不安と恐怖を湛えた顔で長身の東海林を見上げ、か細い声で謝った。

「ごめんなさい、今朝、朝食の席で時間の確認をすべきだったわ……まさかこんな事になるなんて――」

見上げてくる雅の大きな瞳に涙が溢れ出すのを見た東海林は、慌てて膝を付いて雅の視線までしゃがむと、両腕を優しく掴んで「雅様のせいなどではありません」と宥めた。

「でも私がお手間を取らせたから……」

とぐずる雅の涙を、東海林が取り出したハンカチで拭ってくれる。

しばらくすると月哉が雅の涙に気づき小走りに駆け寄って来て、秘書にどうしたのかと問いただした。

「雅様はご自分の取材のせいで高嶋先生に迷惑をかけたのではと、ご自分を責められまして」

秘書の説明を聞くと月哉は雅の頬を両手で包み、目を見つめながら言い聞かせる。

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