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第5章 十三夜月(じゅうさんやづき)

加賀美の行動は明らかにおかしい。

夏季休暇中の早朝に、高等部の生徒が中等部の図書館に偶然居合わせるはずが無いのだ。

「意外と馬鹿なんだな、雅って。そんなの愛のなせる技に決まっているじゃないか」

「………………」

(馬鹿はどっちだ――)

雅は面倒臭いので無視を決め込む。

すると手にしていた封筒を、加賀美に取られてしまった。

「高嶋敦子……って誰? お兄様の今度のガールフレンド?」

雅は指紋を付けないように気をつけていたのに、加賀美はべたべたと封筒を触りまくる。

「先輩の指紋、利用させてもらいますよ。私に付き纏うから、こんな目に合うのですよ」

加賀美から封筒を取り上げると、自分の鞄にしまって雅は席を立つ。

「ああ…そっか、もし指紋を調べられて、鴨志田のライバル会社の社長子息の指紋が出たら、確かに信憑性は無いことはないな」

加賀美は怒るどころか感心し、納得してしまう。

用事も済んだので加賀美の脇をすり抜けて帰ろうとすると、半袖のセーラー服から伸びた腕をつかまれた。

「雅、朝ごはん食べてきた? 俺、学校のカフェでブランチ取るの結構好きでさ。一緒に行こうぜ」

雅は加賀美に掴まれた手を外すと「食欲が無いのでご遠慮します」と丁重に断って立ち去った。

運転手に上野まで車で送ってもらう。

郵便ポストを探して投函すると、身辺調査の報酬分の現金引き出しと現金書留を済ませ、美術館を暇つぶしに見学する。

雅は自分にはあまり絵の才能が無いという自覚があるが絵画をみるのは好きで、時間があると一人で美術館に来てはその世界にどっぷり浸かるのだ。

しかし、今日のように心に余裕が無い時に来ても心ここにあらずで、結局一時間見た後は車を呼んで屋敷へ帰ってしまった。

夕方にピアノとバイオリンのレッスンが入っているので、練習して時間を潰す。

最近は取材を理由に練習をおろそかにしていたためミスタッチが多く、それが更に空虚な心に影を増やしていくようだった。

レッスンが終わると、午後七時を回っていた。

「お兄様は今日もお帰りにならないのかしら」

ピアノを磨いてくれている後藤に声を掛けると「お帰りになるとのご連絡はありません」と返事が返ってきた。

「そう……お忙しいのね」

沈んだ顔をする雅を元気付けようと、後藤は明るい声で話題を変える。

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