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第5章 十三夜月(じゅうさんやづき)

「今日は雅様の好物を、たくさんご用意されているようですよ、昨日お召し上がりになられなかったので、料理長が心配されていましたよ」

正直食欲は無いが、皆を心配させてはいけないと、雅は嬉しそうに微笑んだ。

一人で食事を取るにはあまりにも広すぎる食堂に入り、後藤が引いてくれた椅子に着席する。

雅一人のために食事が次々と供されるが、雅はそのどれも一口ずつ口に入れ、水で無理やり飲み下すのが精一杯だった。

ほとんど残してしまったことを料理長に謝り、私室に戻る。

やることも無いので、雅は明日来る中国語の家庭教師に出された宿題を、もう一度確認することにした。

雅には理事一族として、学年で首席を取り続けるという責務がある。

一族の集まりでは常に、鴨志田の名に恥じない様にとの無言のプレッシャーを感じてきたが、それに押しつぶされたりすることは無い。

生まれた時から架せられたものだし、歴代の理事達も鴨園学園に席を置く雅の六人の従兄姉達も、その責務を全うしているのだ。

一番を取っていれば誰にも何も言われないので、案外単純明快だ。

物音ひとつしない静かな部屋に、ぱらぱらと本をめくる音だけがする。

月哉がいない家は火が消えたかのように、空虚な空間になる気がする。

同じ部屋に居なくても、兄がこの家に居てくれているだけで、安心することが出来るのだ。

(しかしそのお兄様は今、おそらくあの女といる――)

急に胃が気持ち悪く感じ、雅はバスルームへ駆け込んで先程胃に流し込んだ食べた物を全て戻してしまった。

それでも吐き気は止まらず胃液まで吐き、喉がひりひりと焼け付くように痛い。

苦しさで涙がこぼれ、頬を伝う。

(無理して食べるのではなかったわ。人間一週間は食べなくても、生きていけるらしいし)

そのままシャワーを浴びると、雅は倒れこむように眠ってしまった。



翌朝目が覚めても食欲が無く、後藤を通して料理長に謝ってもらった。

屋敷に居ると何か食べるように言われるのが億劫で、雅は学園へ登校した。

(夏休みなのにこんなに学校に来るなんて、私ってどれだけ暇で寂しい人なのかしら)

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