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ネコの拾い方…
第3章 ただの凡人だから…
「清太郎は既に自制心の強い子に育ってると思う。後は知識だけを身に付ければ充分だ。」
藤原の当主は代々が京都の大学で医学部に入る。
このまま僕は医学部へ進めば良いと叔父が言う。
「ふーん…、それで天才少年とはそれきりか?」
昌弘がつまらなそうに鼻を鳴らす。
「なんかあって欲しかったの?」
「そうじゃねえけどさ…。」
「その後の先輩は…、それどころじゃなかったんだ。」
「先輩?」
「ちゃんと話すから急かさないでよ。」
自分のペースを保ちたい僕が口を尖らせれば僕の鼻先でチュッとリップ音が鳴る。
昌弘は僕に甘い。
年下のくせに僕の好きなペースを保とうとする。
叔父から初めて藤原の当主としての心構えを教わった後の僕は遼と会う事はなかった。
ただ…。
中学に入った頃だったと思う。
「清太郎は大阪の吉岡さんの息子さんを覚えてるかい?」
と叔父から聞かれた。
当然、覚えてる。
僕が答える前に叔父は
「ご両親が事故で亡くなられたよ。」
と呟く。
「事故って…、遼はっ!?」
取り乱すべきじゃなかった。
藤原の跡取りとして常に冷静に自制心を保てと言われてたのに…。
叔父は僕を観察するように目を細めて見る。
「さあ、彼は一人息子だったから親戚が預かるみたいだったよ。問題はご両親が亡くなった途端にあの企業の株価が暴落してるって事だね。後2年もつか微妙なところだと経済界では判断してる。」
叔父の冷ややかな視線と素っ気ない言葉に背筋に冷たいものが流れるのを感じる。
藤原は吉岡を助けたりしない。
叔父の考えでは、あの天才少年がこのまま潰れても藤原には関係ないという姿勢を貫くつもりだとわかる。