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ネコの拾い方…
第3章 ただの凡人だから…



不意に肩を強く掴まれる。


「なんだよ…それ…。」


昌弘が低く呻くように言う。

昌弘から発せられる謂れのない怒りが僕へと向けられる。

そういう男だ。

映画やドラマに単純に感情移入する事が出来る昌弘だからこそ、遼に対する同情が怒りとして表れる。


「当時の僕は平凡な中学生で藤原の当主は叔父だ。叔父が決めた事に一族である僕は従うだけだよ。」

「従うだけって…、そりゃ、たった一度だけ遊んだって程度の奴かもしれないよ。けど、それでも清太郎の記憶に残るような存在だったんだろ?なのにまだ中学生の子供を見捨てて知らん顔をするのが藤原の当主の仕事だって言うつもりか?」

「なんで昌弘がキレるんだよ?それに彼が本物の天才ならば、この程度で潰れないという見方もあったんだ。」

「けど…。」

「確かに吉岡の家は潰れたよ。叔父の予想通りにフランチャイズされた店は2年ももたなかった。」

「なんとなく俺も覚えてる。昔はどこにでもあったレストランがいきなり無くなった感じだった。」


昌弘が遠い目をする。

それはあっという間の事だった。

流行り病のように、あれだけ凄い勢いで全国に広まった洋食レストランが一瞬で消え去る。

レストランが消えたのと同じで僕の前に吉岡 遼という天才が現れる事は無いのだろうと思ってた。

その代わり…。


「僕は遊ぶようになった。」

「へ?」


真面目に話をしてるのに、昌弘が間抜けな顔をするから昌弘の鼻を摘んで睨み付ける。

間抜けな表情でポカンと口を開き僕を眺めてるだけ昌弘に話を続ける。

その頃、僕の中に2人の僕が居た。

1人は優等生の僕…。

藤原の当主に相応しく生きる為に感情を捨て、何事にも取り乱す事が無い僕…。

そして、もう1人の僕は…。


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