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ネコの拾い方…
第3章 ただの凡人だから…
「まだ不満?」
「いや、優雅に女遊びをする金持ちボンボンをやってた清太郎にちょっと…。」
「ちょっと…、何?」
「引く…、だって俺の大学時代なんか貧乏だからってバイト、バイトで女と遊ぶ時間とかなかったし…。親からの仕送りなんか毎回、缶詰とカップラーメンって定番だった。」
「昌弘の不機嫌の理由はそこなの?」
「てか、この先の話を聞くのが少し怖い。」
「何故?」
「反抗期だった清太郎が藤原当主になる道を選んだのは、大学で何かあったからだろ?」
僕を愛おしげに見る昌弘の視線から僕は自分の視線を逸らす。
僕は大学では模範的な優等生のはずだった。
なのに幾ら僕が優秀な学生をやり遂げても周囲の人間は
「あれが今年入った新入生の藤原か?」
「女みたいな顔しとるけど成績は常にトップらしいぞ。」
「そやけど、去年のアイツほどやないみたいやな。」
「アイツは特別過ぎるやろ?」
「1年生で論文を2本も発表した天才やからな。」
「既に海外の医学部とか病院から引き抜きの声が掛かってるもんな。しかも女にモテモテとか…。」
「それに比べたら藤原って地味だよな。」
と好き勝手な事を言う。
昌弘の顔色が変わって来る。
「それって…つまり…。」
「この世の中に天才がそんなにゴロゴロ居る訳ない。」
僕と比較される天才…。
しかも僕の先輩として同じ医学部に存在する。
その天才との再会は最悪の形で果たす事になる。
「最悪って?」
昌弘がニヤニヤしながら僕の顔を覗き込む。
当時の事を思い出しただけでも腹が立つ僕は昌弘の表情に更にムカつくとか考える。
「レポートを教室に忘れたから取りに行くと、夕方の教室で女を抱いてる男が居たんだよ。」
吐き捨てるように言えば昌弘がヨシヨシと僕の頭を撫でる。
別に慰めて欲しい訳じゃないと昌弘の手を振り払う。