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ネコの拾い方…
第4章 それは幻だったから…
それで構わないと僕は笑う。
なのに遼が僕をそっと抱き締める。
「なんかあったら、俺を呼べ。清太郎の為やったらなんぼでも時間作って駆け付けたるからな。」
今生の別れじゃあるまいし…。
遼の大袈裟な言葉が擽ったくて照れ臭い。
「そういう事は女に言う言葉ですよ。先輩…。」
「あほか、清太郎やから言うんや。俺が居てやらなお前は1人で馬鹿な事するやろ。」
「大袈裟だな。」
「無理はすんな。飯はちゃんと食うんやぞ。1人で何でも抱え込むな。」
「はいはい、先輩も女遊びはほどほどにね。」
僕の心を掴もうとする遼に馬鹿な姿を晒したくない僕は照れ隠しで軽く遼を突き放す。
貴方が好きです。
そんな言葉は絶対に言うべきじゃない。
この人は男同士の陳腐で滑稽な安っぽい恋愛が似合う天才じゃない。
天才の傍に居られるのは、選ばれた人間だけだ。
僕は遼に相応しいと言われ選ばれる側の人間になりたいと願う。
プライドを高く持てと言われ続けて生きて来た僕だからこそ出来る事だと思い込み自分の自惚れや勘違いにすら気付いてなかった。
「やばい…、眠い…。」
月に一度…。
いや、酷い時は3ヶ月に一度という頻度で遼は僕の家に現れる。
疲れた表情でボロボロになった遼が欠伸をする。
「無理して来なくとも、自分のアパートに帰ればいいじゃないですか?」
「久しぶりに清太郎の顔が見れたんやぞ。飯くらい一緒に食いたいやんけ…。」
5年に上がった僕は既に6年である遼と病院研修で同じ班になっていた。
遼が研修リーダーを務め、その遼に着いて行ける学生は僕だけだという優越感の中での研修…。
遼は過酷な研修の中でもトップレベルが出す論文の制作をやってる。