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ネコの拾い方…
第4章 それは幻だったから…
遼が消えた後は屈辱だけしかなかった。
遼に捨てられた僕には藤原の当主になる道しか考える事が出来なくなっていた。
「清太郎…。」
感情移入しやすい昌弘が同情を見せる。
同情なんか欲しくない。
なのに萎えてしまった昌弘の性器は僕のアナルから抜け落ちる。
「あーあ…、藤原の当主を相手に萎えるとか…、信じられない。」
そうやって昌弘を茶化して挑発する。
「止めろ…、清太郎…。」
「僕が満足するまで抱いてくれる約束だよね?」
「他の男に気持ちが傾いてるのにか?本当は俺なんかじゃなく、お前はその天才に飼って欲しかったネコなんだろっ!」
完全に昌弘を傷付けた。
僕が嫌いだとわかってて僕を突き放した昌弘が乱暴にタバコを取り出して火を灯す。
別に遼に気持ちが残ってる訳じゃない。
ただ、今の僕は迷ってる。
僕は未来を選ぶのが下手な凡人だ。
昌弘が待つ家に帰れる小さな幸せにしがみつく事しか出来ない情けない男だと自覚してる。
熱いものが頬をつたう。
「おい…、清太郎…。」
慌ててタバコを灰皿で揉み消した昌弘の指先が僕の頬に触れて来る。
人に触られるのは苦手だ。
人を触るのが仕事だから…。
なのに僕の頬に触れて来る昌弘の指先が暖かくて、もっと触れて欲しいとか思ってしまう。
流れ落ちる涙を昌弘が何度も指先で拭う。
何故、僕は泣いてるのだろう?
遼を失った事を再確認したからか?
違う…。
今、目の前に居る昌弘を失うかもしれないと思うだけで怖くて堪らないからだ。
僕は叔父のように壊れ始めてる。
遼に見捨てられて僕には藤原の当主という立場とプライドしか残ってなかった。
その当主もやがて甥の昌のものになる。
僕には何も無い。
いや、そもそも僕は何者だ?
作り上げられた虚像の中で生きて来ただけの男…。
そんなくだらない男は平凡な昌弘にすら捨てられる。