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ネコの拾い方…
第4章 それは幻だったから…
「泣くほど天才が恋しいか?」
痛々しい声がする。
今にも死にそうな顔をする昌弘のせいで胸に強烈な痛みが走る。
「色…褪せた…セピア色の…世界で…。」
僕が感じた熱い視線…。
僕の言葉に昌弘が驚愕する。
「それって…。」
今度は昌弘が狼狽える。
遼が去った後の僕の世界に光も色もなかった。
京都にある藤原の本家に戻り、叔父の助手として生活する毎日…。
景色はセピア色に流れ、時すら感じない日々…。
ある日、叔父から
「もう、清太郎に教える事は無い。」
と言われた。
そして叔父は出会った頃のように、穏やかで春の陽射しの様な笑顔を僕に向ける。
僕はもう何も感じてなかった。
それが叔父の最後の言葉だった。
翌日、叔父も藤原の屋敷から姿を消した。
僕が叔父から教わった事と云えば常に自制心を保つ事だけ…。
完全に孤独になった僕は自制心を保ち、完璧な理性で藤原当主の務めを果たしてるつもりだった。
寂しいとか考えない。
僕は藤原 清太郎なのだから…。
一族を従える当主が弱みを見せてはならない。
凡人だからとか言い訳はしない。
そう思ってたのに…。
もう1人の僕が僕を笑う。
『お前、自分の未来も自分の足で歩めないのか?』
そして藤原の屋敷を飛び出していた。
その時の事を自分ではあまり覚えていない。
遼が言うように僕が本当になりたかったものを探し求めて見知らぬ街を彷徨い歩く。
セピア色に染まる世界の中で…。
ふと熱い視線を感じた。
全てが色褪せてる世界なのに…。
それはとても熱くて、眩い夏の陽射しを思わせる視線だから思わず僕は視線の送り主を探してしまう。