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ラブ・アンド・セックス
第3章 石原夫妻の艶技
「ずるい。私もやってもらえばよかった」

隣で夏希さんが言った。

「じゃあ、やりましょうか」

「えっ、いいの?」

「はい。夏希さんが、いいのであれば」

石原さんと麻衣の撮影が終わると、今度は夏希さんが植草くんに声を掛けた。

「お願い。こっちももう1枚撮って」

オレがお姫様抱っこをすると、直ぐに夏希さんが首に手を回してきた。身体が密着し、夏希さんの体温が伝わってくる。顔が近い。麻衣とは少し違った女性の匂いが鼻をくすぐる。

オレたちは、そのまま写真を何枚か撮ってもらった。

「最後の一枚です。いきますよ……はい!」

植草くんが言ったときだった、夏希さんがオレの頬っぺたにキスをしてきた。

「おい、夏希、それはやり過ぎだろう」

石原さんは大きな声を出したが、怒っているわけではない。笑っている。

オレは耳元で夏希さんの吐息を聴きながら、チラッと麻衣を見た。麻衣は、困ったような顔をしてオレを見ている。

「はい、OKです」

植草くんが言った。

オレは夏希さんをそっと下ろした。

「ありがとう」夏希さんは、そう言ったあと、オレの耳元に再び顔を近づけて、「好きよ」と囁いた。

「えっ」

驚いて顔を見ると、夏希さんは妖しく微笑みながら、石原さんの元へと去っていった。石原さんの腕をとると、楽しそうに話をしながら、二人で建物の中へと入っていく。

そんな夏希さんの後ろ姿を目で追いながら、今のはどういう意味だろうか、とオレは考えた。
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