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ラブ・アンド・セックス
第1章 大きな舞台に立ちたい!
オレが麻衣と出会ったのは、学生時代、いろんな大学が集まる演劇祭のときだった。オレとは違う大学だった麻衣は、『ローマの休日』のアン王女を演じていた。映画でオードリー・ヘップバーンがやった役だ。

舞台に麻衣が登場したとき、オレは一瞬、本物のオードリーが現れたのかと思った。あとで聞いた話だが、麻衣は幼いころからクラシックバレエを習っていて、それもコンクールで入賞するレベルだったらしい。手足が長く、八頭身のスレンダーな身体をしていて、すっと立った姿がとても美しかった。

芝居は、アン王女が大使館を抜け出すところから始まった。トラックの荷台に隠れて街に出て、アメリカ人の記者、ジョー・ブラッドレーに出会う。二人は互いに身分を隠してローマの街を巡り、そして恋に落ちる……。

麻衣は、アン王女の上品で愛らしい仕草を見事に表現していた。整った美しい顔が見せる豊かな表情、聴いているものを気持ちよくさせる清んだ声、指先まで神経の行き届いたしなやかな動き……。その一つひとつにオレは魅了された。

アン王女がジョーと分かれるクライマックス。麻衣は涙を流しながら、セリフを言った。

「どうやったらさよならを言えるかわからないわ。言葉が思いつかないの」

「何も言わなくていいよ」

抱き合い、キスをする二人。アン王女はジョーの手を振りほどくと、駆け去っていった……。

オレは、いつの間にか涙を流していた。胸がキュンと締め付けられた。

オレは、恋に落ちた。
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